どんな症状ですか

まず甲状腺とは何か、
どんな症状があるのか、どんな働きを持つのかを説明しましょう。

甲状腺とは・甲状腺はのど仏の付近にある臓器で、体の新陳代謝を促進する働きがあります。 こんな症状は恒常性疾患が原因かもしれません。・肌荒れ・寒がり・暑がり・むくみ・イライラ・月経不順・息切れ・下痢・食べないのに太る等

このような症状があれば積極的に検査される事をお勧めします。
また、甲状腺ホルモンにも種類があります。

甲状腺ホルモンを一定に保つ甲状腺刺激ホルモン(TSH)・甲状腺刺激ホルモンは甲状腺ホルモンバランスを調整する役割があります。

ここまで甲状腺や甲状腺ホルモンの働きについてご説明しました。
では、甲状腺疾患にはどんなものがあるか見てみましょう。

  • バセドウ病
  • 橋本病
  • 亜急性甲状腺炎
  • 甲状腺良性腫瘍
  • 甲状腺悪性腫瘍
  • 甲状腺機能異常
  • 出産後甲状腺機能異常症

疾患その

バセドウ病

バセドウ病という病名は、1840年にこの病気を発表したドイツの医師カール・フォン・バセドウにちなんで名づけられました。バセドウ病の発症年齢は幼児から老人まで特定の年齢はありませんが20代から40代の女性に多い傾向があります。
バセドウ病は、甲状腺を異常に刺激する抗体が自分の体で作られ、この抗体が甲状腺刺激ホルモンの代わりに甲状腺を刺激し、どんどん甲状腺ホルモンを作らせてしまう病気です。また、バセドウ病の患者さんの15%くらいは親・兄弟も同じ病気にかかっています。遺伝的な素質もある程度関係しているようですが、まだよくわかっていません。

検査

1)甲状腺機能の検査
血液中の甲状腺ホルモンの測定をします。バセドウ病の場合、甲状腺ホルモン量が増加し、甲状腺刺激ホルモンが低くなっています。


2)甲状腺の抗体検査
バセドウ病であれば、抗TSH受容体抗体が陽性になります。


3)超音波検査
甲状腺がび漫性に腫大しています。

治療方法

1)薬による治療
甲状腺ホルモンの合成を抑える薬(抗甲状腺薬)を、規則的に服用します。適切な量の薬を飲んでいれば、1~3カ月で、血液中の甲状腺ホルモンの値が正常になります。ホルモン値が正常化すれば、自覚症状もなくなってきます。 薬だけでバセドウ病を治そうと思う通常は3〜5年程度は薬を続けることになります。薬を続けている限りは1〜3月毎に通院して血液検査を受けなければいけません。


2)アイソトープ(放射性ヨウ素)治療
放射性ヨード(アイソトープ)のカプセルを内服します。内服した薬は胃腸で吸収されて甲状腺に集まってきます。そこで甲状腺の中から放射線を出して甲状腺の細胞を潰してくれます。実際の放射線治療はカプセルの薬を飲むだけです。放射線治療の良い点は全身麻酔や手術のような負担がないことです。放射性ヨウ素カプセルの服用後、およそ2〜6カ月で甲状腺ホルモンの分泌は減少してきます。


3)手術療法
過剰にホルモンを分泌している甲状腺を外科的に切除する方法です。 ホルモンの分泌元である甲状腺を切除することにより、ホルモンの過剰産生を是正します。基本的に全身麻酔で行います。

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疾患その

橋本病(慢性甲状腺炎)

橋本病は、橋本策(はかる)博士が1912年(大正元年)に世界で初めてこの病気に関する報告をされたので、博士の名前にちなんでつけられた病名です。
橋本病は慢性甲状腺炎ともいいますが、甲状腺に慢性の炎症が起きている病気という意味でこのように呼ばれることもあります。橋本病は、甲状腺の病気の中でも特に女性に多く、成人女性の20~30人に1人の頻度でみられます。

サイログロブリン抗体、ペルオキシダーゼ抗体など甲状腺細胞に対する自己抗体の存在により、少しずつ、甲状腺が破壊されます。 症状として、甲状腺全体が均一に大きくなります。甲状腺ホルモンが正常の場合には、症状はみられません。

しかし、ホルモンが不足してくると、顔や手のむくみ、体重増加、便秘、皮膚乾燥、なんとなくだるい、眠い、嗄声など甲状腺機能低下症の特有な症状がみられます。

診断

1)甲状腺機能の検査
血液中の甲状腺ホルモンの測定をします。また、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定も行います。
少しでも甲状腺ホルモンの不足があると、それを下垂体が敏感に感じてTSHの分泌を増やし、血液中の濃度が上がります。つまりTSHの濃度が少しでも高ければ、甲状腺ホルモンの不足があるということになり、甲状腺の機能が低下していることがわかります。


2)甲状腺の抗体の検査
び漫性甲状腺腫大があり、抗甲状腺マイクロゾーム抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体、抗サイログロブリン抗体が陽性であれば橋本病と診断されます。この抗体も血液検査でわかります。 当院では、ホルモン検査、抗体検査が約1時間でわかります。

治療

甲状腺機能が正常な場合は治療の必要ありません。甲状腺機能低下を認めれば、甲状腺ホルモン剤(チラージンS ®)の内服が必要となります。

注意事項

  • 橋本病と診断された場合、甲状腺機能が正常であったとしても甲状腺機能が変化することがありますので、6か月または1年に1度は定期検査を受けてください。
  • 橋本病の患者様が出産後(出産後甲状腺機能異常症)、インターフェロン治療後に甲状腺機能低下を示すことがあります。いつもと違うと感じたり、症状があれば検査を受けてください。
  • 橋本病の患者様が甲状腺機能低下症をきたすリスクファクターは、喫煙です。禁煙をお勧めします。
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疾患その

亜急性甲状腺炎

風邪のような症状と発熱を認め、続いて前頚部の痛みと共に軽度の甲状腺の腫大が認められます。
痛みは通常甲状腺の一部から始まり次第に移動します。しかし、症状がないことや、気づかない場合もあます。また、痛みの程度も様々です。

診断

甲状腺に痛みはありますが頸部の発赤はありません。血液検査では、甲状腺ホルモン値の増加、血中サイログロブリンの上昇、CRPの上昇、甲状腺自己抗体が陰性、抗体価が低いという結果で他の疾患と鑑別できます。超音波検査では不整形の低エコー域の存在が認められます。

治療

治療は副腎皮質ホルモンの内服です。痛みは内服後24時間以内に消失します。お薬をきちんと服用しても15%〜20%程度再発する事があります。

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疾患その

甲状腺良性腫瘍
線腫様甲状腺腫

甲状腺に1〜数個のしこり(結節)ができる病気です。
典型的な腺腫様甲状腺腫では、左右の甲状腺に大小さまざまな大きさのしこりがいくつかできます。このしこりがたくさんできると、外見上はくび全体が大きくはれたように見えます。首のしこりや腫れを自覚したり、他人から首の腫れを指摘されたりする場合もあれば、超音波検査による健診で偶然発見される場合もあります。
これは本当の腫瘍ではなくて医学用語では過形成といわれるものです。

診断

超音波検査細胞診で診断がつきます。この病気は本来良性ですが、一部に癌が含まれていることがありますので、きちんと鑑別診断を受ける事が大切です。また、多くは大きさが変わりませんが、時に大きくなることもありますので定期的な受診をお勧めします。

治療

ただちに治療が必要となることは少なく、ほとんどは6か月〜1年に一度の通院による経過観察となります。圧迫症状が強い場合や、首の腫れが目立ち、美容的な問題がある場合、また癌の合併が疑われる場合は外科的治療をお勧めすることもあります。

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疾患その

甲状腺悪性腫瘍
甲状腺乳頭癌

甲状腺癌の8割以上を占めるのが乳頭癌です。
原因はまだ不明で、症状がないことが多いです。症状が認められても甲状腺にできる痛みのないしこりや、リンパ節の腫れ程度です。
乳頭癌は進行が遅く、治りやすいものが多いのが大きな特徴です。この癌細胞を顕微鏡で観察すると、癌細胞が「乳頭」のような形をつくっているので、この名前がつけられています。
甲状腺乳頭癌は、頚部のリンパ節への転移が多い、肺や骨など遠隔臓器への転移は少ない、 進行すると反回神経(声を出す神経)や気管に浸潤することがある、約5%の確率で家族内発症があるという特徴があります。

診断

超音波検査(エコー)細胞診(エコー下穿刺吸引細胞診 )診断がつきます。必要に応じて、さらにCT(コンピュータ断層撮影)検査を行います。甲状腺の腫瘍マーカーの検査も行われますが、他臓器の癌のように、癌細胞特有の物質はみつかっていません。

治療

基本的には、手術です。甲状腺の切除と頚部リンパ節の郭清を行います。

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疾患その

不妊・流早産と甲状腺機能異常

甲状腺機能亢進症および甲状腺機能低下症においては、以前から妊娠の成立に大きな影響を及ぼすことが明らかにされています。最近注目を集めているのが、潜在性甲状腺機能低下症と不妊の関係です。

潜在性甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモン(FT4)の量は基準範囲内ですが、甲状腺刺激ホルモン(TSH)値が基準上限を超える病態をいいます。
潜在性甲状腺機能低下症でも不妊・流早産率が高く、これらの異常はサイロキシン治療で改善できることが世界のトピックスになっています。

不妊女性における潜在性甲状腺機能低下症の出現頻度は平均で11.7%であり、不妊女性の10人の1人がこの病態を合併しています。
- - -「産婦人科治療」vol.102増刊(2011.4)

診断

妊娠可能域の女性にはTSH(甲状腺刺激ホルモン)を測定して、甲状腺機能を確認することが大切です。

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疾患その

出産後甲状腺機能異常症

出産後甲状腺機能異常症とは、出産を契機として起こる種々の甲状腺機能異常の総称です。
出産後に出現するめまい、肩凝り、頭痛、不眠、動機などの症状は、これまで、“産後の肥立ちが悪い”“育児ノイローゼ”“血の道症”といわれてきました。しかし、こうした症状を持つ人の中には出産後甲状腺機能異常症が含まれていることが分かりました。

出産後甲状腺機能異常症は、5つに分類されます。

  • 出産後3〜6か月よりバセドウ病を発症するもの
  • 出産後2〜4か月に一過性の甲状腺中毒症を示すもの
  • 出産後1〜3か月に破壊性甲状腺中毒症を示し、引き続いて一過性または永続性甲状腺機能低下症を
    示すもの
  • 出産後1〜2か月より破壊性甲状腺中毒症を認めずに、一過性甲状腺機能低下症を示すもの
  • 出産後より永続性甲状腺機能低下症を示すもの

出産後甲状腺機能異常症が比較的よく認められるのは、出産後1~3カ月の早期に破壊性甲状腺中毒症になり、引き続き一過性甲状腺機能低下症、または永続性甲状腺機能低下症を示すケースです。
破壊性甲状腺中毒症とは、バセドウ病とは異なり、甲状腺に何らかの炎症が起こり、血液の中に甲状腺ホルモンが余分に出て、症状を起こします。この病気は一過性であるため放置していてもすぐに症状は消えますが、まれに永続性甲状腺機能低下症を来します。

診断

これらの病気の検査方法は極めて簡単で、血液検査で診断は可能です。
血液中の甲状腺ホルモン、脳下垂体からの甲状腺刺激ホルモン、抗甲状腺抗体を測定します。

治療

検査で異常があっても、症状が軽ければ治療の対象にはなりませんが、症状が強く異常があれば治療が必要になります。
機能低下症であれば甲状腺ホルモンの補充療法を、破壊性甲状腺中毒症の場合はバセドー病に用いる抗甲状腺薬剤は使わず、頻脈などを防止する薬剤を使用して症状の軽快を図ります。

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